【読書】『アウシュヴィッツのタトゥー係』

『アウシュヴィッツのタトゥー係』

ヘザー・モリス:著

金原瑞人・笹山裕子:訳

(双葉社)


インスタグラムで読んでいる人がいて、

感想もほぼなく、興味をもっていた本。

たまたまいつものように本屋を

歩いていた時のこと。

目に入ってしまった平積みの白と緑色。

ほかに目立つ本なんてたくさんあったのに

見惚れてしまって、手に取った。

最初の数ページを読んで、

パラパラめくって読もうとしていたのが嘘のように

目も手も離せなくなった。

幸い時間はある。

小一時間読めればいいと思った。

気付いたら、4時間ものあいだ

本屋で立ち読みしてしまっていた。

一気に、先へ、先へ。

早く次が読みたくて仕方ない。

そんな気にさせてくれた本だった。

 

ストーリー

 

以下、ネタバレを含みます。

主人公ラリは、

1942〜1945年までの3年間、

アウシュヴィッツとビルケナウを行き来しながら

死と隣り合わせの毎日を過ごした。

冒頭から一つこ言葉が何度も頭をよぎる。

「ひとりを救うことは、世界を救うこと」

ぜひ、本を一読していただきたい。

あなたのたった少しの行為が

たったひとり、だれかに届くかもしれない。


彼はスロヴァキア生まれのスロヴァキア育ちのユダヤ教徒。

それでも、ナチスは彼を捕え、

家畜運搬用の列車に詰め込み、

ポーランドにあるアウシュヴィッツ収容所に送り込んだ。

今生きている若者の全てが、
普通に生きているなら(特に日本は)
胸にかかげる夢を持ち

明日は当然来ると思いながら今日の眠りにつく。


それが許されない日々。


「朝、目が覚めたなら、今日はいい日だ」

と思うまでに追い詰められた人々の物語。


収容所では収容された全員に何らかの仕事が与えられていた。


力仕事から事務、さらに死体処理係まで、

何の仕事に就くかは管理するドイツ軍人の気まぐれで決まる。


そして、どんな仕事をするかで生存の可能性が大きく変わる。

ラリは、屈服したのでも同胞を裏切ったのでもない。
「生き延びること」


 何が何でも生きたまま収容所を出ることこそ、最大の抵抗になると考えたのだ。


 幸いラリは何ヶ国語も話せる教養豊かな人物だった。

賢いだけでなく人当たりの良さもあり、

比較的優遇されるタトゥー係の任に就くことができたのは幸運ばかりではなかっただろう。

 タトゥー係の仕事は、輸送されてくる人々の腕にナチスが与えた番号を刻むこと。

収容者を家畜扱いし、名を奪うことで尊厳を踏みにじるのだ。


こんなことを考え出し、

実行に移すことができる人間の底知れない悪意には言葉もない。

 人が遊びで銃殺されるような状況の中、
ラリは立場を利用しながら少しでも他の収容者の役に立とうと奮闘する。


そして、恋に落ちるーー

想像してしまったらおぞましいほどの実際にあった現実なのだが、

 地獄でも心を失わなかった人々のエピソードや、

ラリの恋の顛末が救いになってもいて、あまり意識せずに読める。

それでも読んでいて気分が悪くなる人もいそうだ。

 ラリの3年間は、現代を生きる私たちが必ず知るべきである。


同時に、決して生きることを諦めなかった男が

「真の強さ」を問いかける記録でもある。


 
私たちは再び過ちを犯してしまうかもしれない。

 戦争のような極限状態でなくても、

私たちは想像より簡単に被害者にも加害者にもなる。


そして、どちらの立場になっても、

夢見たはずの幸せな人生はあっさり破壊される。

自分がラリと同じ状況に置かれて、同じように希望を失わず、

他社を励ましながら生き抜くなんてことができるだろうか、と思わずにはいられなかった。


彼は抵抗を覚えながら、救われた自分の命について考え特殊な仕事をこなし、ギタという瞳の美しい娘に出会います。


背負った運命の辛さや恐怖、

したたかに生き抜く意味、愛の尊さ。

それでも優しさをもって

人に触れることの大切さを教えてくれる素晴らしい本。

解説にあるように彼は後世に語り継ぐための証人として、

神から遣わされた人物なのかもしれない。

日本に生まれただけで、世界の6%の裕福な人たちの仲間入りをしている。

もっと今の自分、取り巻く環境に感謝しよう。

 

 

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